【てらびと vol.1】藤岡善信さん

こんにちは、中村です。
今回は新企画の「てらびと」をお届けします。

「てらびと」とは、仏教界で革新的な方をピックアップし、インタビューをさせて頂くという企画です。どの世界でも救世主は、常識にとらわれない革新的な方だと思います。そういう方たちのお話をお伺いし、お寺の未来を考える材料になればと思います。

さて、記念すべき第一回目のゲストは、藤岡善信さんです。
多数のメディアに取り上げられているのでご存知の方も多いと思います。昼間は、浄土真宗本願寺派の僧侶、夜は「坊主バー」の店主として活動されています。他にも音楽活動など、ジャンルを問わずアクティブに活躍されています。なぜバーを経営されているのか?現代のお坊さんの社会的な役割とはなんなのか?その真意をお聞きしてきました。

坊主バーへ

場所は四谷の飲屋街。雑多な中にも品がある不思議な雰囲気の荒木町へ。
一見さんは中々入りにくい感じなのですが、ドアを開けるとあたたかく迎えてくれ、ホッとした気分になります。

オープン前でお忙しいにもかかわらず、ご丁寧に取材に応えていただきました。

「道」を求めていきたい

—-お坊さんになったきっかけを教えていただけますか?

出身は岡山県で高校時代はボクシングをやっていました。そのボクシングの推薦で東京の大学へ進学し、その大学がたまたま仏教系の大学で、大学時代に仏教に目覚めたという経緯ですね。といっても特に授業で影響を受けたというわけではなく、ボクシングを通じて仏教の考え方に興味が湧いてきたという方が正しいと思います。もともと実家もお寺ではないのですが、母親がお坊さんになっていたりと、私にとって仏教は身近な存在ではありました。

—-そういった自然の成り行きでお坊さんになられて、こちらの「坊主バー」とはどのような関わりがあったのでしょうか?

もともと大阪に「坊主バー」がありまして、そこの店主が東京に出すというときに私の同級生が立ち上げに参加していたのですが、半年くらいで経営がうまくいかなくなってしまい、誰かにしっかり経営を任せたいということで私のところにお話がきたという経緯ですね。
私はお寺の出身ではないし、お坊さん学校に出てもその先は決まっていませんでした。私の中でなんとなくお寺に勤めたくないというぼんやりとした考えはありました(笑)それでタイミングも良かったし、お受けしたという流れです。

仏教の教えには興味があったのですが、お寺にはあまり興味が無かったというのが本当のところですね。お葬式や法事も大切だとは思いますが、私はもっといろんな方の声に耳を傾けていきたかったのです。

—-大阪の「坊主バー」は当時業界からはどのような目で見られていたのでしょうか?

そんなに注目もされていなかったと思いますよ。地元の方で少し話題になる程度じゃないですかね。

—-こちらの「坊主バー」をやっていく上で業界の目は気にならなかったのでしょうか?

特に気にはなりませんでしたね。これも布教の一環だと考えていましたので。

本来のお寺の機能を果たす

—-平成12年から経営されて18年目になると思うのですが、バーを経営して良かったことは何ですか?

良かったことは、お寺にいたら絶対出会えないような人と出会えたことと、そういった人たちの声に耳を傾けられたことです。お寺に対する素直な気持ちが聞けることは、尊い経験をさせて頂いていると思っています。

—-現在でも日中はお寺にいらっしゃるんですよね?

はい。

—-お寺にいらっしゃるときに檀家さん以外の一般の方とお話する機会はありますか?

全くないですね。おかしな話ですよね(笑)
だからこちらのバーの方がお寺と言えるかもしれませんよね。本来のお寺の機能を果たしていると思います。誰でも来れますしね。

—-18年前と今で大きく変わったことは何でしょうか?

お客様の層は変わってきましたね。数もそうですが、自然と認知されるようになって、はじめは「坊主バー」は特異的だったと思いますが、徐々に受け入れられて来たということなんじゃないですかね。まあ、まだ珍しがってくる方の方が多いのですが(笑)お寺としての役目は果たしている気がしますね。

誤解を解いていく場所でもある

—-では逆にバーを経営されて大変なことは何でしょうか?

大変なのは、誤解されることが多いことですね。お酒を扱うので、お坊さんが堕落してこういうことをやっているとか思われがちですが、本質は仏教を身近に感じて頂くことにあります。
当初は金儲けや堕落しているとかそういった抗議の電話も頂いていました。

—-それは、業界の方では無くて一般の方からですか?

一般の方からですね。業界の方は仏教を理解しているのでそういったことは言いません。
やはりまだお坊さん=聖職者というイメージがあるのでしょうね。
日本はお酒に寛容でありますから。みなさんと同じ生活もしますし、お酒も飲むし、結婚も許されていますから。まあ、そういった誤解を解いていく場所でもあるなと思っていますけどね。

—-お話を聞く限り、一般の方の仏教に対する知識が足りていないと感じるのですが、

足りていないですね。。それは我々の責任でもあると思います。まだ色々な意味で布教活動ができていなかったのではないかと感じます。檀家制になってあぐらを掻いていたんだと思います。なぜかというと、布教活動しなくても経営が成り立つからです。経営が成り立つのであれば余計なことはしませんからね。面倒臭いことしたくないじゃないですか?(笑)

—-私も面倒くさがり屋なのでその言葉を聞いて安心しました(笑)
私はお仕事で様々なお坊さんにお会いすることがあるのですが、閉鎖的な空気を感じることがあります。

これからもっといい方向に変わっていくと思いますよ。まだまだこれからですね。早く変わって欲しいですよね。

—-18年前と比べて業界の空気は変わりましたか?

全然変わりましたよ。坊主バー始めた時は、こういうことをやっている人はいなかったですからね。今だとカフェやバーなど増えてきましたけど。当時はお寺を解放していくという動きは全くありませんでした。

—-では徐々にオープンになってきているのですね。

若い方を中心に新しい活動をしている人は増えていますよね。
良い流れになってきていると思います。

心をリセットしてもらいたい

—-こちらのお客様の男女比はどのくらいですか?

女性の方が多いですね。4:6くらいでしょうか?
女性の方が宗教に対してオープンなんだと思いますよ。

—-お一人で来られる方もいらっしゃるんですよね?

全然いますね。大体お一人でくる女性は相談が多いですね。
はじめはあまりお話にならないのですが、時間が経つにつれてお話になられる方が多いですね。

—-坊主バーの社会的な役割についてどのようにお考えですか?

お寺のような場所だと思います。もともとお寺はコミュニティーの場所ですし、心の拠り所になる場所です。ここへ来るとホッとするといった感覚が理想ですよね。一般の方は普段生活していると心がザラついて来ることもあると思うのですが、そういった時にリセットする場所なんですよ。本来のお寺は。実はバーという機能もリセットすることだと思うんです。なので、どちらの機能も兼ね備えたような場所ですよね。街にある、夜に開かれたお寺です。ここでみなさん、心をリセットして頂く場所になればいいなあと。一番は仏様の教えが少しでもお伝えできればと精進していきたいと思っています。

—-坊主バーの役割をお寺で行うのは難しいのでしょうか?

今は難しいですね。将来的にはそういう方向にいきたいと思っています。お酒は出しませんけど(笑)
というか、やらないといけませんよね。開かれたお寺というのを。
看板とか出していれば誰でも来れるようになると思うんですけどね。それで来た人にお茶出したりとか。各お寺の住職の気持ち次第でいろんなことができると思いますけどね。居場所が無い方の居場所にしていきたいですよね。小学生からお年寄りまで気軽に集まれる場所を目指しています。

—-ご住職次第ということですね。そう考えると現代のお坊さんの役割についてはどのようにお考えなのでしょうか?

お坊さんは先生でも無いですし、導く人でもありません。道先案内人といいますか、交通整理といいますか、仏様の邪魔をしないようにしないといけませんよね。あまりお坊さんが前に出すぎても良くないと思っています。いろんな活動は必要なのですが、自分を売るためでは無く、仏様を売るための営業マンのような存在では無いでしょうか。

—-そういったバランスが必要なんですね。

一時期、坊主ブームがありましたが、ああいったものもどうなのかなと思ってしまいます。
あくまでも主役は仏様ですから。

—-しかし、そのようなブームで若い方たちがお坊さんになりたいとか思うきっかけになるんじゃないでしょうか?

確かにそういった面はあるかもしれないですね。現に今でもお坊さんになりたいというお声はよくお聞きしますよ。若い方に限らず、そういったお声はありますよね。ただ、これだけはご縁ですので。

伝統的なものを大切に

—-最近「お坊さん便」や「宿坊」などがビジネスとして注目されていますが、どのようにお考えでしょうか?

需要があれば良いと思いますし、そういう時代になったということではないでしょうか。批判があったともお聞きしていますが、しょうがないことだと思います。檀家制が崩れてきたのでこのような形になったのではないでしょうか。われわれも考えていかなければなりません。

—-檀家制度はどうなっていくんでしょうか?

どうなっていくんですかねぇ。。なにか形を変えた檀家制が生まれる気もしますし。やはり、お墓ですよね、お寺って今墓守りの役目になっているんですよ。お店もそうですが常連さんや会員さんだけを大切にしているとやはり気がよどむため発展はしない気がいたします、知らず知らずに甘えが出てしまいますから、努力しなくなりますね。

—-そのような考えの住職は少数派な気もしますが。

難しい問題ですよね。住職が変えようとしても檀家さんが変えて欲しくない場合もありますし。お店の常連さんだってあまりにお店が流行ったりすると離れたりしますし、新しい風が吹くと嫌がる人は多いですが、私はお構いなしにどんどん新たな風を吹かせていこうと考えておりました。新陳代謝がないと病気になるのです。もしかしたらお寺にもこのことは当てはまる論理なのかもしれません。

—-なるほど、どこにでもあるようなしがらみがお寺にもあるんですね。

—-最近の仏教業界に対して何か思うことはありますか?

そうですねぇ、どこの層に向けてかで変わってくるんですが、どんどん新しい動きがあって面白いと思いますね。

—-もっと多様化していった方が良いと?

そうですね。やっぱり今すごい過渡期だと思うんですよ。

—-いろんな方がいらっしゃいますよね。

面白いですよ。どんどん壊していって欲しいですよね(笑)
それで本質を伝えていって欲しいですよね。しかし伝統的なことは大切にして欲しいと思います。それが教えを伝えていくということですよね。奇をてらうだけではなく、本質的なことは歪めないで大切にしたいですね。

あとは意識だと思います。何をやっていても。オープンマインドと言うか。そこがしっかりしていれば間違うことはないと思います。

—-前向きな方が多数派になれば変わりそうですね。高齢者以外にも仏教には興味を持って欲しいですね。

これから社会にでるような若い方に説法など聞いて欲しいですよね。それを社会に活かして欲しいと思いますよ。

何かを得ようと瞑想してもダメ

—-若い方なんかはマインドフルネスとか一般化していますが、あれは本質を突いているのでしょうか?

少し違うみたいですね。実はタイのお坊さんと週に一回ここでヴィパッサナー瞑想を行っています。マインドフルネスの元となった瞑想法ですね。今7年くらい一緒にやっていますね。きっかけとしてマインドフルネスから入るのは良いかもしれませんね。
タイのお坊さんは、坊主バーが一番キャッチーじゃないかと言って始められてますけど。

—-マインドフルネスとヴィパッサナー瞑想はプロセスが違うんですか?

詳しくはわかりませんが、タイのお坊さんが言うには「目的」が違うみたいですね。幸せになりたいと悟りを開きたいは違いますからね。やはり何かを得ようとして瞑想してもダメだと思いますね。

—-勉強になります。個人的な質問になりますが、今後の藤岡さんの活動予定をお聞きしても良いでしょうか?

今からやっていこうとしているのは「カジュアル法事」ですね。新しい法事の形です。
元々法事は親戚が集まって、何回忌じゃないといけないとか、田舎に帰らないといけないとか特定の条件に縛られていますよね。そういった条件が信仰心を薄れさせていると思うんですよね。だからもっとカジュアルにしたいですよね。誰でも来れておじいちゃんやおばあちゃんを供養したいと思った時に参加できるような法事ですよね。それはもう今月から始めます。隣がそのスペースになっています。


※カジュアル法事のスペース

—-最後に若いお坊さんに向けて何か思うことはありますか?

私なんかが偉そうに言えることは何も無いのですが(笑)
バランスが良い人になってほしいですよね。頭でっかちではなく実践で学んで欲しいです。いろいろな社会勉強も必要だと思いますし、坊主バーで働くのが良いんじゃないですかね(笑)

貴重なお時間ありがとうございました。

取材後に名物メニューを頂きました。

フードは精進料理で、普段食べる機会がない生麩の料理など絶品です。
お酒も日本酒からカクテルまで揃っているので、どなたでも楽しめます。どんな人でも一度足を運んでみてください。心のザラザラ感が取れますよ!

■藤岡善信(ふじおか・よしのぶ)
1976年生まれ。岡山県出身。浄土真宗本願寺派僧侶。駒沢大学卒業後、仏籍を取得。「VOWZ_BAR(坊主バー)」の店主でもある。さまざまなメディアにも取り上げられ、2012年に出版された「美坊主図鑑」にも登場した。

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